陀枳尼天
真言密教では、稲荷神をインド伝来の女の鬼神・陀枳尼天(茶枳尼天・ダキニテン)と同一であるとしています。稲荷は二つに分類されます。五穀と養蚕を司る穀物神・農耕神としてのウカノミタマ(宇迦之御魂・倉稲御魂)で稲荷明神として知られています。このお稲荷さん(稲荷神)は、京都の伏見稲荷大社が信仰の発祥神社で、一般に伏見稲荷として知られ、全国三万余りの社の総本社となっています。この社と合わせ、佐賀・祐徳稲荷大社、茨城・笠間稲荷神社を日本三大稲荷と呼びます。
もう一方は、神社ではありませんが、愛知・豊川稲荷(正式名:円福山妙厳寺・曹洞宗)は仏教のダキニテンを稲荷神として祀ります(江戸の名奉行・大岡越前守が信仰したことで知られます)。開山の東海義易の師寒厳義尹に始まる話、義尹が宋から帰朝するときに、突如として陀枳尼天が現れて「以後、義尹を守護する」と告げた。それに感激した義尹は陀枳尼天を自刻し、妙厳寺の山門に鎮守として安置したのが始まり。開山時には、さまざまな奇跡を起こして便宜をはかったといわれる。

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