川口 善光寺
川口 善光寺
【江戸名所図会】 善光寺のところに載っている図と文章を写す。
川口善光寺 川口村渡し場の北にあり。天台宗にして平等山阿弥陀院と号す。本堂には阿弥陀如来・観音・勢至一光三尊を安ず。寺伝に日く、往古定尊(鎌倉初期の僧)といへる沙門あり。法華経を誦するの外他なし。建久五年(1194)の夏、一時(あるとき)睡眠のうちに信州善光寺如来の霊告を得ることあって、ただちにかしこにまうで、正しく如来の聖容を拝す。示現によって、十方に勧進し財施を集め、金銅をもって中尊阿弥陀仏を鋳奉る。時に建久六年己卯(1195)五月十五日なり(仏の御胸中には、三寸五分の水晶の宝塔をこめ、うちに仏舎利四十八顆を収めたてまつる)。同六月二十八日・二十九日に脇士(きょうじ)観音・勢至の二尊を鋳奉る。つひに堂字を建立して善光寺と号す(御告げによって、四十八首の間四十八度の開眼供養を修行しけるに、本師如来降臨あって、当仏の頂を摩(な)でて、ともに開眼したまふよし、当寺縁に詳らかなり)。
二王門の額に「平等山」とあるは、黄檗木庵(おうばくもくあん)(木庵性滔、1611〜84。帰化僧〕の筆なり。