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《評》 人物描写に進歩 (読売新聞夕刊・2006-03−06)
三遊亭小圓朝 襲名披露米国公演

 昨年5月から、真打ち昇進襲名披露公演を続けている圓之助改め三遊亭小圓朝が、2月25日、26日アメリカ・カリフォルニア州サンノゼ市の未来堂ホールで公演を行った=写真=。海外での落語家の襲名披露は、おそらく初めてのことであろう。
 ホールには、2日とも約80人の客が集まった。ほとんどが、現地に滞在する日本人だが、初めて落語を聞く人も多い。

 保田武宏撮影
こういう客には、名人芸ばかりよりも、バラエティーに富んだ演目で、親しみやすくしたほうがよい。
 今回は、口開けに小圓朝が、笑いの多い短い噺をやり、ついで師匠の三遊亭圓橘が、人情物をたっぷりと聞かせる。披露口上を挟んで、最後に小圓朝が得意の中ネタで締めくくるという構成。これが客にうまくはまって、公演は大成功だった。
 小圓朝の最初は、「強情灸」(初日)と「雑俳」(2日目)。芸としては「強情灸」のほうがよかったが、笑いは「雑俳」が多かった。
 圓橘は「子別れ(中、下)」と「芝浜」。理路整然で、淡々とした「芝浜」だが、次第に夫婦の情がにじみ出て、うまくサゲに結びついた。
 口上も、初日は現代風に小圓朝の人柄を紹介し、2日目は昔ながらのかしこまった口調から入るなど、変化を持たせたのは結構。
 トリの小圓朝は、「天狗裁き」と「転宅」。披露公演で何度も口演している「天狗裁き」は、洗練されて笑いも多く呼んだが、進歩を見せたのは「転宅」だった。泥棒と会話をして、ひけをとらないお梅という女性の強い面ばかりではなく、内心は恐がっているところまで表現できるようになった。落語はやはり人物描写が第一である。
              演芸評論家 保田武宏



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